大きなものを小さくたたんで持ち運ぶ。それは、傘やはしごのような日用品から、陸海空の乗り物、建物に至るまで様々な工夫が積み上げられてきた構造設計の夢の一つです。
自然界でも、昆虫たちが翅を獲得した四億年前からこの問題に取り組んできました。
その成果の一つが、カブトムシなどの大型甲虫の後翅です。硬い前翅の内側にとても巧みな方法で
折りたたまれた薄い翅は、一か所に力を加えるだけで全体が一瞬で展開されます。
この作品ではその精妙な構造を3Dプリンタで再現しました。
J.A.C.
飯澤大介 共同研究:三菱電機デザイン研究所 デザインエンジニアリンググループ
私たちはふとしたとき植物や石などの自然物を相手に対話をしている感覚を持つことがあります。それが人工物であっても、そこに僅かな手がかりさえあれば、それを対話の対象として捉える
ことができるようです。
この作品では、知的な人工物とのミニマルなインタラクションのデザインを探求しています。
擬人化表現を用いずに、幾何学形状の変形によって、共同注意(Joint attention)である
相互注視(Mutual gaze)または視線回避(Gaze aversion)を表現し、インタラクションする
私たちの心に他者理解の感覚を促し、最小限の知性を感じさせることを意図しています。
作品が動き出す前と後に生じる感覚の変化に注目してください。
Twisting Skelton
村上元
アニメや映画で見かける「動く骸骨」がもし実在したら、どのように動くでしょうか?
この作品は、人間の呼吸する様子と背骨を捻る動作を、骨格のみで表現しています。
本来は、骨だけでなく、筋肉や腱などが複雑に繋がり合って動く人間の身体。
生き物らしさ、人間らしさのエッセンスを探ります。
Parametric Tube
樗木浩平 ディレクター:大長将之、杉原寛
山中研究室が続けてきた、3Dプリンタを用いた様々な構造の試作。その試作品の内の一つを
偶然に捻ってみたことから生まれた作品です。数十本の繊維を束ねることで、「らせん」を「ねじる」というシンプルな行為から、膨らみや窄みなどリズミカルな形状の変化がうまれます。この作品は、繊維の太さ、本数、断面形状、螺旋の巻き数、全体の長さと太さなど、いくつものパラメーターの試行錯誤から、美しく見えるバランスを選び出したものです。
今回はこれまでに発表した円筒形に加え、三角や四角などの異なる底面を持つ作品を展示しています。角が加わることで生まれる違った表情をご覧ください。
Torso
ネコ科の動物の歩く姿は、しなやかで美しさを感じます。
動きをよく観察してみると、四本の足はすべて、同じ一本の線上を歩いていることが分かります。
この作品では、歩行によって現れる、肩甲骨の盛り上がりと背骨のうねりを表現しました。
従来の四足歩行ロボットでは、高精度な脚の動きは実現されていますが、胴体は堅く、動きが
固定されているものが一般的です。
あえて脚を無くすことで制約を減らし、立体的に動く胴体を実現しました。
胴体のみの状態から、歩く姿を想像してみてください。
Ame-mism
ほとんどの道具は、人に使用されていない間は何も機能を果たしていません。人にとって便利で
あることが追求された結果、道具は、その使用中ですらも存在が意識されにくくなっています。
人に意識されない道具たちは、もしかすると、暇を感じているのかもしれません。
この作品は、普段何気なく使っている傘という道具に生き物のような動きを与え、その暇を訴える傘置きです。見た目はそのままの傘が生き物のように振舞い、他の誰かの傘と交流を行い始めたとき、持ち主は何を感じるでしょうか。