Photography by Yukio Shimizu

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Bio-likeness ― 生命のエッセンスの抽象化

世界的にも珍しい日本人の「ロボット好き」。その背景には、人工物を擬人化したり、キャラクターとして扱ったりする文化的な特性があるといわれています。ロボットに対して「生きてるみたい」などの言葉が使われる状況の多くは、設計者の意図しないところで起きてきました。人はしばしば「生命や知性のきざし」をロボットなどの自律的な人工物に見いだしますが、このような心理効果を意図的に人工物に持たせようとする試みや研究は少ないのが現状です。

わたしたちは、人の認知に生命や知性の存在を訴えかける人工物の様態を「Bio-likeness」と名付けました。それはヒューマノイドや犬型ロボットのような、既存の生物の仕組みをモータ等の機械部品に置き換えることではありません。人工物の機構そのものや行動原理、ソフトウェアなどに普遍的に存在する「生命感」の魅力を、デザインや設計手法により体系化することを目指したものです。

これまで山中研究室でBio-likenessの具現化として制作してきた人工物は一見、不思議な動きをするだけの役に立たない機械です。しかしわたしたちはこの研究が、人と人工物の将来における、より親和性の高いコミュニケーションの基礎になるという仮説、つまり文化的機能と工学的機能の接点となる新しいデザイン分野の開拓であると考え、今日までプロトタイプの制作を行ってきました。

Bio-likenessのエレメントを抽出して、デザイン、設計手法を確立すること。これが将来の自律的な人工物やネットワークロボティクス普及の鍵となって、愛するロボットたちのいる日常の始まりとなることを考えています。